賃借人が家賃を滞納しがちなので退去を求めたいという場面は少なくありません。
しかし、借主の権利は法律で強く保護されています。
したがって、適切な手続きを踏まなければトラブルが深刻化する恐れがあります。
そこで、本記事では、弁護士が、家賃を滞納された場合の退去のさせ方と注意点を詳しく解説します。
家賃を滞納されたら退去をさせることができるのか
まず、家賃の滞納が発生した場合、退去をさせることができるのでしょうか。
結論として、原則として3ヶ月の滞納を目安に退去させることができるとされています。
ここで注意が必要なのが、原則として1か月の滞納だけでは契約解除の理由として不十分とされています。
判例は、賃貸借契約を解除するには、信頼関係が破壊されたと認められる必要があるとされています(最判昭和27年4月25日)。
参考 最判昭和27年4月25日判決
そして、家賃滞納の場合、3ヶ月の滞納が信頼関係破壊の目安とされています。
これは、賃借人の滞納が軽微な場合、建物から追い出されるのはあまりにも酷であることから、賃借人を保護するための法理です。
しかし、長期間にわたり2か月滞納の状況が継続しているなどといった悪質な場合には、例外的に解除が認められる場合もあります。
家賃を滞納した借主に退去してもらうための流れ
家賃を3ヶ月滞納している場合は、以下の手続きで退去をさせることとなります。
任意での催促
まずは、口頭や普通郵便等で催促することが考えられます。
その際は、滞納額を明示するようにしましょう。
また、感情的にならず、冷静に家賃を払うように要求しましょう。
内容証明での催告
まずは、内容証明で借主に対し催告を行います。
原則として、賃貸借契約はいきなり解除できないため、賃料を払うように促し、相当期間の経過を待つ必要があります。
内容証明には以下の事項を記載する必要しましょう。
- 滞納額及び期間
- 到達日から相当期間(1週間程度)が経過するまでに賃料全額を支払う旨の催促
- 相当期間が経過しても賃料が支払われない場合は相当期間経過時をもって賃貸借契約を解除する旨の意思表示
- 物件の所在地・物件名
この催告したことについては、後の訴訟で必要となることがほとんどであるため、確実に必要事項を記載するようにしましょう。
ここで漏れがあると、訴訟で請求が認容されなくなる可能性があるため注意が必要です。
また、内容証明郵便自体が法律上必須というわけではありませんが、いつ、どのような内容の通知をしたかを証明しやすくなるため、実務上は内容証明郵便を利用することが多いです。
建物明渡訴訟の提起
内容証明を送付しても滞納が解消されない場合、建物明渡訴訟を提起します。
この、建物明渡訴訟は、裁判所に対して借主の退去を命じる判決を求める手続きです。
訴訟の流れは以下の通りです
- 訴状の作成と提出:訴状を作成し、管轄の地方裁判所または簡易裁判所に提出します(弁護士を使わず本人が訴状を作成することも可能ですが、記載漏れ等により請求が認容されなくなるおそれがあります)
- 第1回口頭弁論:通常、訴状提出から1~2ヶ月後に開かれます
- 審理:証拠調べや必要によっては証人尋問が行われます(多くの場合証人尋問は行われない)
- 判決:オーナー側の主張が認められれば、明渡しと未払い賃料の支払いを命じる判決が出されます
訴訟期間は通常6ヶ月~1年程度ですが、借主が争う姿勢を見せる場合はさらに長期化する可能性があります。
一方で、相手方が争わない場合もあり、その場合は1回の期日で終了する場合もあります。
勝訴判決が出た場合、判決の正本が送達されてから14日が経過しないと判決が確定しないため、14日の経過を待つ必要があるの原則です。
一方で、仮執行宣言付きの判決が出た場合、判決の確定を待たずに執行の手続きに移行することができます。
経験上、賃料不払いを原因とする建物明渡請求の場合、多くの場合でこの仮執行宣言が出されます。
仮処分の活用
判決確定までの間に部屋の占有者が被告から移転する可能性がある場合は、占有移転禁止の仮処分を申し立てることが考えられます。
判決を取得し、強制執行に移行した場合であっても、訴訟が終わる前に占有が移転し、執行時に訴えた相手方とは別の者が住んでいる場合には、原則として判決の効力が及ばず、執行をすることができません。
その場合、再度実際に住んでいる者を被告として訴訟を行う必要があります。
そこで、占有移転禁止の仮処分を行うことで、占有が移転した場合でも、原則として移転した後の占有者に対しても、執行することが可能となります。
強制執行による家賃滞納者の強制退去
判決が確定しても借主が退去しない場合、強制執行の手続きを取ります。
強制執行の流れは以下の通りです。
- 執行文の付与
- 強制執行申立て
- 催告
- 断行
まず、執行文の付与を裁判所に申立て、その後、管轄の地方裁判所の執行官に執行の申立てを行います。
その後、催告を行い、〇月〇日(催告から約1か月後)に強制退去させる旨を債務者(賃借人)に通知し、指定された日時に断行を行い、荷物をすべて運び出し、明渡を完了させます。
経験上、多くの場合、催告時に賃借人がいても、断行時には必要な荷物を持って出ている場合が多いです。
この手続きにより、明渡が完了します。
自力救済の禁止
賃料を滞納された場合の注意点は、オーナーが自力で借主を追い出すことは許されません。
この自力救済の典型例は以下の通りです。
- 無断で鍵を交換する
- 借主の荷物を勝手に処分する
- 電気・水道を止める
- 脅迫や嫌がらせで退去を迫る
これらの行為は、住居侵入罪や器物損壊罪に問われる可能性があり、逆に借主から損害賠償を請求されるリスクもあります。
必ず法的手続きを踏む必要があるため、注意が必要です。
まとめ
本記事では、賃借人が家賃滞納をした時の退去のさせ方について解説しました。
- 裁判で強制退去させることができるのは、原則として3ヶ月滞納から
- 訴訟提起前に内容証明で支払い催告と解除の意思表示をする
- 必ず法的な手続きに乗せて退去させる必要がある(自力救済の禁止)
家賃を滞納している賃借人を強制的に追い出すには、裁判手続きを行う必要があります。
したがって、退去させたい賃借人がいる場合は弁護士に相談することをおすすめします。
以下の相談フォームから、賃借人とのトラブルについてお問い合わせください。

コメント