会社を経営していると、就業規則の変更が必要になる場面は必ず訪れます。
しかし、就業規則は必ずしも会社が自由に書き換えられるものではありません。
手続きを誤れば変更が無効と判断され、後日トラブルが発生するリスクがあります。
特に、従業員に不利益な内容への変更(不利益変更)は、労働契約法によって制約が課されています。
そこで、本記事では、弁護士が、就業規則の変更手続きの流れと、不利益変更が許される限界について、解説します。
就業規則の作成義務の有無を知りたい方や作成手続きについて知りたい方はこちら
就業規則の変更手続き
就業規則を変更する際の具体的な手続きの流れは以下の通りです。
変更内容の検討・条文案の作成
まず、変更の目的を明確にし、変更すべき条文を特定して新しい条文案を作成します。
正社員用・パート用など複数の就業規則や附属規程がある場合には、関連規程への影響も確認します。
この段階で、変更が従業員にとって不利益かどうかを必ず検討してください(不利益にあたる場合の対応は後述します)。
過半数代表者(過半数労働組合)からの意見聴取
次に、変更した就業規則について、過半数代表者からの意見聴取を受ける必要があります。
使用者は、就業規則の変更について、事業場の労働者の過半数で組織する労働組合(ない場合は労働者の過半数を代表する者)の意見を聴かなければなりません(労働基準法90条1項)。
ここで注意すべきは、必要なのは「意見を聴くこと」であって「同意を得ること」ではない点です。
反対意見が出たとしても、意見聴取の手続き自体を適切に行っていれば、届出は可能です。
ただし、過半数代表者の選出は、管理監督者(労働基準法41条2号)を除外したうえで、投票などの民主的な方法によって行う必要があります。
したがって、会社が一方的に指名した代表者からの意見聴取は無効となるおそれがあるため、注意が必要です。
労働基準監督署への届出
次に、変更後の就業規則を事業場を管轄する労働基準監督署へ届け出る必要があります。
この際、過半数代表者から意見聴取をした結果を記載した意見書を併せて添付します。
従業員への周知
就業規則を変更した場合、変更後の就業規則を従業員に周知しなければなりません(労働基準法106条1項)。
周知の方法は、①各作業場の見やすい場所への掲示・備付け、②書面の交付、③電子データとして記録し各作業場で常時確認できる機器に保存することがあげられます。
この周知を欠くと就業規則が無効となるため注意が必要です。
参考 厚生労働省 就業規則作成・見直しのポイント
参考 厚生労働省 労働者に周知させる方法がとられていない就業規則は無効
就業規則の不利益変更の原則禁止
ここまで、就業規則の変更手続きについて解説しました。
では、会社は自由に就業規則を不利益に変更することはできるのでしょうか。
この点について労働契約法9条は以下のように定めています。
労働契約法9条
使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない。
このように、労働契約法9条は、就業規則の不利益変更を原則として禁止しています。
ただし、以下のような例外もありますので、解説します。
就業規則の不利益変更の例外
就業規則の不利益変更は、例外的に、労働契約法10条の要件を満たせば、認められます。
労働契約法10条
使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。
少し長いですが、同条が就業規則の不利益変更を認める要件の一つ目が、変更後の就業規則を労働者に周知させたことです。
周知の具体的な方法については上記の通りです。
要件の二つ目は、就業規則の変更が合理的なものであること
合理性は、次の5つの考慮要素に照らして判断されます。
- 労働者の受ける不利益の程度
- 労働条件の変更の必要性
- 変更後の就業規則の内容の相当性
- 労働組合等との交渉の状況
- その他の就業規則の変更に係る事情
このように、就業規則の変更の合理性については、さまざまな事情を総合的に考慮し判断されます。
賃金に関する就業規則を変更する場合
裁判例では、賃金に関する就業規則の変更の可否について、より厳格に判断しています。
まず、第四銀行事件(最高裁平成9年2月28日判決)は、以下のように判示しています。
特に、賃金、退職金など労働者にとって重要な権利、労働条件に関し実質的な不利益を及ぼす就業規則の作成又は変更については、当該条項が、そのような不利益を労働者に法的に受忍させることを許容することができるだけの高度の必要性に基づいた合理的な内容のものである場合において、その効力を生ずるもの
この判例は、賃金・退職金など労働者にとって重要な労働条件の不利益変更には高度の必要性が求められるとしています。
つまり、賃金に関する就業規則を労働者の不利益に変更する際は、その合理性について慎重に判断する必要があります。
就業規則の変更は弁護士にご相談ください
本記事では、就業規則の変更手続きと、不利益変更の可否について解説しました。
- 変更には、意見聴取、届出、周知が必要
- 不利益変更は原則禁止
- 例外的に変更が合理的な場合は不利益変更が可能
就業規則は、労使関係を規律する重要なものです。
したがって、就業規則の手続きや内容を誤るとトラブルに発展するおそれがあります。
トラブルを防ぐためには、あらかじめ就業規則を弁護士に作成もしくはレビューを受けることも一つの手です。
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