取引先との業務委託契約を終わらせたいが、どのように進めればよいのか分からない。あるいは、取引先から突然、契約の打ち切りを告げられて困っている。
このような、業務委託契約の解除に関する相談は、実務上も多くあります。
しかし、契約書の条項や法律を確認しないまま解除を進めると、相手方から損害賠償を請求されたり、途中までの報酬に関してもめたりするおそれがあります。
そこで、この記事では、弁護士が、業務委託契約の解除について、委託者・受託者双方の視点から解説します。
本記事は2026年10月時点の法令・公表情報に基づいて作成しています。 個別の事案については、必ず弁護士にご相談ください。
業務委託契約の解除の種類
下記の通り、業務委託契約が終了する場面は、3つに分けられます。
それは、業務委託契約の期間満了による終了・中途解約・債務不履行解除です。
期間満了による終了はその名の通り、契約期間が終了することに伴い、業務委託契約が終了することです。
中途解約は、双方の落ち度がない中で、業務委託契約を、期間中に解除するもので、民法の原則では、委任契約(準委任も含む)の場合に認められています。
債務不履行解除とは、どちらかが契約を履行しない場合に、その相手方が契約を解除することをさします。
どの場面でも、まず確認すべきなのは次の2点です。
契約の性質(請負か、委任・準委任か)
まず、業務委託契約が、民法上の請負に当たるのか、委任・準委任に当たるのかを確認します。
成果物の完成を目的とする契約は請負、一定の業務の遂行を目的とする契約は委任・準委任と整理されることが一般的であり、どちらに当たるかによって、中途解約のルールや途中までの報酬の扱いが異なります。
もっとも、実際は、業務委託契約書を見ただけでは、契約の性質が定かではないことが多いです。
したがって、契約の性質によりルールが異なる事項については、あらかじめ業務委託契約書において、当該契約におけるルールを定めておく場合が多いです。
業務委託契約書の記載事項については、「業務委託契約書とは?必要な記載事項とチェックポイントを弁護士が解説」で解説していますので、併せてご覧ください。
契約書の解除・解約条項
次に、契約書に、解除や解約に関する条項があるかを確認します。
以下で解説する民法の規定は、原則として、契約書に定めがない場合に適用されます。
したがって、原則として契約書の規定が民法の規定に優先することから、「1か月前までに書面で通知すれば解約できる」といった予告期間や、解除事由、違約金などが定められている場合には、その定めに従って対応するのが基本です。
期間満了による契約の終了
では、まず、契約期間の満了によって業務委託契約を終了させる場合を見ていきます。
期間の定めがあれば、満了によって終了が原則
契約期間が定められている業務委託契約は、期間が満了すれば終了するのが原則です。
相手方に契約違反がなくても終了させることができ、相手方の同意も必要ないため、契約を円満に終わらせたい場合には、期間満了のタイミングを利用するのが最も穏当な方法といえます。
自動更新条項がある場合は、更新拒絶の通知期限に注意
ただし、「期間満了の1か月前までにいずれからも申出がない場合は、同一条件で1年間更新する」といった自動更新条項がある場合には注意が必要です。
この場合、通知期限までに更新しない旨を伝えなければ契約が更新されてしまい、次の期間満了まで契約が続くことになります。
委託者・受託者のどちらの立場であっても、契約終了を考えている場合は、まず通知期限を確認し、期限内に書面やメールなど記録の残る方法で更新を拒絶する旨を通知しておくことが重要です。
フリーランスとの継続的な取引では30日前までの予告が必要
さらに、委託者が従業員を使用する事業者で、受託者がフリーランス等である場合には、フリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)にも注意が必要です。
フリーランス法16条1項
特定業務委託事業者は、継続的業務委託に係る契約の解除(契約期間の満了後に更新しない場合を含む。次項において同じ。)をしようとする場合には、当該契約の相手方である特定受託事業者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、少なくとも三十日前までに、その予告をしなければならない。ただし、災害その他やむを得ない事由により予告することが困難な場合その他の厚生労働省令で定める場合は、この限りでない。
このように、6か月以上の業務委託では、契約を更新しない場合も含めて、少なくとも30日前までに予告する必要があります。
予告は、書面、ファクシミリ、電子メール等の方法で行うこととされています(厚生労働省関係特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行規則3条)。
また、受託者は、予告を受けた日から契約が満了する日までの間に、解除の理由を開示するよう求めることができ、委託者は遅滞なく開示しなければなりません(フリーランス法16条2項)。
したがって、委託者は、相手がフリーランス法の適用対象かどうかについて確認する必要があり、適用対象の場合は、上記のような対応を行う必要があります。
フリーランス法については、「【個人事業主の報酬未払い】回収の流れとフリーランス法の活用を弁護士が解説」で解説していますので、併せてご覧ください。
中途解約(契約期間の途中での解除)
次に、相手方に契約違反がないものの、契約期間の途中で契約を終わらせたい場合を見ていきます。
契約書に中途解約の定めがあればその規定に従いますが、定めがない場合には、契約の性質によってルールが異なります。
委任・準委任は、いつでも解除できる
まず、委任・準委任に当たる業務委託契約は、委託者・受託者のどちらからでも、いつでも解除することができます。
民法651条
1 委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。
2 前項の規定により委任の解除をした者は、次に掲げる場合には、相手方の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。
一 相手方に不利な時期に委任を解除したとき。
二 委任者が受任者の利益(専ら報酬を得ることによるものを除く。)をも目的とする委任を解除したとき。
このように、解除そのものは自由にできますが、相手方に不利な時期に解除した場合には、やむを得ない事由がない限り、相手方の損害を賠償しなければなりません。
たとえば、受託者が繁忙期の直前に解除した場合などには、損害賠償責任を負う可能性があります。
請負は、完成前であれば注文者から解除できる
次に、請負の性質を持つ業務委託契約では、仕事が完成するまでの間であれば、注文者(委託者)は、損害を賠償していつでも解除することができます。
民法641条
請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができる。
一方で、民法には、請負人(受託者)の側からいつでも解除できるとする規定はありません。
そのため、請負に当たる契約で受託者が途中で解除したい場合には、業務委託契約書の中途解約条項に従うか、委託者と話し合って合意によって契約を終了させる必要があります。
途中で終了した場合の報酬の精算
中途解約で問題になりやすいのが、それまでに行った業務の報酬の取り扱いです。
委任・準委任の場合、契約が履行の途中で終了したときは、受託者は、すでにした履行の割合に応じて報酬を請求することができます。
民法648条3項
受任者は、次に掲げる場合には、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる。
一 委任者の責めに帰することができない事由によって委任事務の履行をすることができなくなったとき。
二 委任が履行の中途で終了したとき。
また、請負の場合も、仕事の完成前に解除されたときに、すでに行った仕事のうち可分な部分によって注文者が利益を受けるときは、受託者は、その利益の割合に応じて報酬を請求することができます(民法634条)。
したがって、業務委託契約が中途で解除された場合は、受託者がどこまで仕事を完成させたか確認する必要があります。
債務不履行による解除
ここまでは、双方に債務不履行がない場合の終了方法を解説しました。
では、相手方が納期を守らない、報酬を支払わないといった契約違反をしている場合における、業務委託契約の解除について解説します。
原則として、相当の期間を定めて催告する
相手方が契約上の義務を果たさない場合、まずは相当の期間を定めて履行を求め(催告)、それでも改善されない場合に業務委託契約を解除します。
民法541条
当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。
もっとも、ただし書きの通り、契約違反があっても、
なお、委託者側の典型的な契約違反である報酬の未払いについては、「【
催告せずに直ちに解除できる場合
一方で、催告をしても意味をなさない場合には、催告をせずに直ちに解除することができます(民法542条1項)。
たとえば、債務の全部の履行が不能である場合や、相手方が債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に示した場合、特定の日時までに履行されなければ契約の目的を達成できない場合などがこれに当たります。
なお、民法541条・542条は、解除の要件として、相手方の落ち度(帰責事由)を求めていません。ただし、契約違反が解除しようとする側の責めに帰すべき事由によるものであるときは、解除することができません(民法543条)。
解除後の原状回復と損害賠償
契約が解除されると、各当事者は、相手方を契約前の状態に戻す義務(原状回復義務)を負います(民法545条1項)。
たとえば、前払いされた報酬のうち未履行の部分の返還や、預かっていた資料・データの返却をさします。
また、解除をしても、契約違反によって生じた損害の賠償を別途請求することは妨げられません(民法545条4項)。
委託者・受託者それぞれの注意点
最後に、立場ごとに、業務委託契約の解除の場面で特に注意すべき点を整理します。
委託者(発注者)側の注意点
委託者側は、まず、解除の理由と、その根拠となる事実を記録として残しておくことが重要です。
特に債務不履行解除をする場合は、催告をした事実(基本的に内容証明)を残しておく必要があります。
また、解除の通知は、後に争いになった場合に備えて、書面や内容証明郵便など記録の残る方法で行うことが望ましいといえます。
なお、契約の名称が業務委託であっても、実態が雇用と変わらない働き方をさせていた場合には、契約の解除が実質的に解雇と評価され、解雇の規制が問題となる可能性があります。
この点は「偽装請負とは?
受託者(受注者)側の注意点
受託者側は、突然解除を告げられた場合、まずは契約書の解除条項を確認し、予告期間が守られているか、解除の理由が契約書の定めに当たるかを確認します。
そのうえで、不利な時期の解除であれば損害賠償を、途中まで行った業務については報酬の支払いを求めることを検討することが考えられます。
また、契約が終了しても、秘密保持義務などは契約終了後も存続すると定められていることが多いため、その内容も確認し、秘密保持に留意する必要があります。
秘密保持条項については「秘密保持契約書(NDA)とは?
本サイトを運営する弁護士は、業務委託契約の解除通知書の作成や
解除の進め方に迷っている方や、一方的な解除に納得できない方は、下記のフォームからお問い合わせください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 業務委託契約は、何日前までに解除を伝えればよいですか?
まずは契約書に定められた予告期間に従います。定めがない場合、委任・準委任ならいつでも解除できますが、相手方に不利な時期の解除は損害賠償の対象となり得ます。また、フリーランスとの6か月以上の業務委託では、少なくとも30日前までの予告が必要です。
Q2. 受託者の側から、途中で業務委託契約をやめることはできますか?
委任・準委任に当たる契約であれば、受託者からもいつでも解除できますが、委託者に不利な時期の解除には損害賠償のリスクがあります。請負に当たる契約では、民法上、請負人からいつでも解除できる規定はないため、契約書の条項に従うか、委託者との合意による終了を目指すことになります。
Q3. 解除の通知は、メールでもよいですか?
契約書に通知方法の定めがあればそれに従います。定めがない場合は、メールで通知すること自体は可能ですが、後に「受け取っていない」と争われることを防ぐため、重要な解除通知は書面や内容証明郵便で行うことが望ましいといえます。
まとめ
本記事では、業務委託契約の解除について、期間満了・中途解約・債務不履行解除の場面ごとに解説しました。
- 解除を検討する際は、まず契約書の解除条項と、契約が請負か委任・準委任かを確認する
- 期間満了で終了させる場合は、自動更新条項の通知期限に注意する
- フリーランスとの6か月以上の業務委託では、解除・不更新の30日前予告が必要
- 委任・準委任はいつでも解除できるが、不利な時期の解除は損害賠償の対象となり得る
- 債務不履行解除は原則として催告が必要で、軽微な違反では解除できない
業務委託契約の解除は、契約書の内容や契約の性質によって取るべき手順が異なり、進め方を誤ると、解除ができない可能性があります。
当サイトを運営する弁護士は、業務委託契約の解除に関するご相談に、委託者・受託者いずれの立場でも対応可能です。
トラブルになる前に、早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。相談を希望する方は以下のフォームからご連絡ください。
この記事の執筆者
本サイトを運営する弁護士(第一東京弁護士会所属)が執筆しています。

コメント