業務委託契約を結んでいる相手方の担当者に、社員と同じように毎日の作業内容を指示したり、勤務時間を管理したりしていないでしょうか。
契約が業務委託契約や請負契約であっても、実際の働かせ方によっては、違法な労働者派遣(いわゆる偽装請負)と判断されるおそれがあります。
そこで、この記事では、弁護士が、偽装請負とは何か、その判断基準と業務委託契約における注意点について解説します。
本記事は2026年9月時点の法令・公表情報に基づいて作成しています。 個別の事案については、必ず弁護士にご相談ください。
偽装請負とは
偽装請負とは、契約の形式上は請負契約や業務委託契約とされているにもかかわらず、実態としては労働者派遣に当たる状態で業務が行われていることをいいます。
業務委託・請負と労働者派遣の違い
まず、業務委託・請負と労働者派遣の違いを整理します。
業務委託契約書に記載すべき基本的な事項については、「業務委託契約書とは?必要な記載事項とチェックポイントを弁護士が解説」で解説していますが、業務委託・請負では、受託者が発注者から独立して業務を遂行し、発注者は受託者の労働者に対して指揮命令を行いません。
これに対して、労働者派遣とは、派遣元が雇用する労働者を、派遣先の指揮命令の下で働かせる形態をいいます。
労働者派遣法2条1号
自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいい(後略)
労働者派遣事業を行うには、厚生労働大臣の許可が必要です。
労働者派遣法5条1項
労働者派遣事業を行おうとする者は、厚生労働大臣の許可を受けなければならない。
そのため、形式上、業務委託や請負でありながら、実質的に労働者派遣に当たる場合、労働者派遣法5条1項の潜脱となるため、偽装請負は禁止されています。
なぜ偽装請負が問題となるのか
次に、偽装請負がなぜ問題となるのかについてです。
労働者派遣には、派遣期間の制限や、派遣先の責任など、労働者を保護するための各種の規制が及びます。
偽装請負は、こうした規制の適用を免れながら、実質的には他社の労働者を自社の指揮命令下で働かせるものであり、同法律の趣旨に反するため、禁止されています。
偽装請負の判断基準(37号告示)
では、業務委託・請負と労働者派遣は、どのように区別されるのでしょうか。
この区別の基準を定めているのが、いわゆる37号告示です。
労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(昭和61年労働省告示第37号)2条
請負の形式による契約により行う業務に自己の雇用する労働者を従事させることを業として行う事業主であつても、当該事業主が当該業務の処理に関し次の各号のいずれにも該当する場合を除き、労働者派遣事業を行う事業主とする。
そして、上記の基準は、下記の通り、労務管理に関する指揮命令及び、事業運営上の独立性という要件をいずれも満たす必要があり、これらを満たさない場合、契約の名称にかかわらず、労働者派遣を行っているものと扱われます。
この要件について、下記で詳述します。
労務管理に関する指揮命令
まず、偽装請負と判断されないためには、労務管理に関して雇用主の指揮命令下にある必要があります。
労務管理に関する事項とは具体的に以下の事項をさします。
- 業務の遂行方法
- 業務の遂行に対する人事評価
- 労働時間、残業の管理
- 当該労働者に対する服務規律の管理、指示
- 当該労働者の配置
上記の事項を、発注者ではなく、受託者が自ら指示・管理していることが必要です。
また、厚労省は、上記で記載した事項すべてについて、受託者(雇用主)が判断する必要があるとしており、一つでも発注者が管理している場合は偽装請負に該当するため注意が必要です。
例えば、発注者が、受託者の労働者に対して直接、作業手順を指示している場合、日々の業務に対する評価をしたりしている場合や、労働時間を管理している場合などは偽装請負に該当することになります。
事業運営上の独立性
次に、偽装請負に該当しないためには、受託者が、事業運営上独立して、委託(請負)業務を遂行する必要があります。
この、事業運営上独立したというためには、下記をすべて満たす必要があります。
- 業務の処理に必要な資金につき、すべて自らの責任の下に調達、支弁していること
- 業務の処理について、法律上規定された事業主としてのすべての責任を負うこと
- 自己が調達した機械、設備や器材により、業務を処理すること
- 自ら行う企画又は自己の有する専門的な技術若しくは経験に基づいて、業務を処理すること
参照 厚生労働省 労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準
したがって、受託者は、上記を徹底し、自らの委託業務として、労働者に業務を遂行させる必要があります。
偽装請負に該当しやすい具体的なパターン
ここからは、実務上、偽装請負に該当しやすいとされる典型的なパターンを紹介します。
発注者が受託者の労働者に直接指示を出しているケース
まず、発注者の従業員が、受託者の労働者に対して、日々の業務内容や作業の進め方を直接指示しているケースです。
チャットツールやオンライン会議で、発注者から受託者の労働者個人へ直接、細かい作業指示が日常的に飛んでいるような場合は、注意が必要です。
形式的な管理責任者しか置いていないケース
また、受託者側が現場に管理責任者を置いているものの、その責任者が名目的な存在にすぎず、実際には発注者が労働者を直接管理しているケースも、偽装請負と判断されやすい典型例です。
管理責任者を置くこと自体が目的ではなく、その責任者が実質的に労働者の業務遂行や労働時間を管理しているかが問題となります。
偽装請負と判断されないための、業務委託契約上の留意点
最後に、偽装請負と判断されないための業務委託契約上の留意点について解説します。
なお、業務委託契約書一般の作成上の留意点については「業務委託契約書とは?必要な記載事項とチェックポイントを弁護士が解説」で解説していますので、併せてご覧ください。
指揮命令関係を明確にする
まず、指揮命令関係を契約書で明確化することが考えられます。
上記のように、発注者との間で指揮命令関係にある場合は、偽装請負に該当します。
そこで、契約書において、発注者と受託者の従業員は指揮命令関係にない旨を定めることが有効です。
ただし、受注者は、発注者の意向に沿って業務を遂行する必要がありますので、その条項に、発注者は、調整が必要な場合には責任者に対して意向を伝える旨の文言を加え、窓口を一本化するとよい場合があります。
設備や材料等を受託者が調達する旨を定める
次に、設備や材料等が必要な場合、これらを受託者が調達する旨を定めることも考えられます。
上記のように、事業運営上の独立性を確保するために、自己が調達した機械、設備や器材により、業務を処理することが求められます。
したがって、業務遂行にあたって、設備や材料等が必要な場合は、設備や材料等を受託者が調達する旨を定め、調達の責任を受託者が負う建付けにすることは有効な手段であるといえます。
まとめ
本記事では、偽装請負とは何か、判断基準と業務委託契約における注意点について解説しました。
- 偽装請負とは、契約形式は請負・業務委託でも実態が労働者派遣に当たる状態をいう
- 判断基準は37号告示に定められ、指揮命令や事業経営上の独立性の実態で判断される
- 発注者が受託者の労働者に直接指示を出しているケースなどが典型例である
偽装請負に該当するかどうかは、日々の業務運用の実態を踏まえた総合的な判断が必要であり、自社での見極めが難しい場面も少なくありません。
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この記事の執筆者
本サイトを運営する弁護士(第一東京弁護士会所属)が執筆しています。


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