退職理由は会社に言わないとダメ?聞かれた場合の法的扱いと注意点を解説

労働問題

退職を申し出た際、会社から退職理由を聞かれ、どう答えるべきか悩む方は少なくありません。

中には、正直に言わないといけないのか、嘘を言ったら問題になるのではないかと不安を感じている方もいるでしょう。

結論から言えば、原則として、退職理由を会社に説明する義務は原則としてありません

もっとも、状況によっては注意すべき場合もあります。

そこで、本記事では、退職理由を言う法的義務の有無や理由を言わなかった場合の影響などについて、法令を根拠に解説します。

退職理由を会社に言わないといけないのか

退職理由を会社に言う必要があるかについては場面によって異なります。

そこで、無期雇用の場合、有期雇用の場合と依願退職の場合の3つの場面に分けて解説します。

無期雇用の場合に退職の理由を言わないのはNGか

無期雇用の場合は、退職理由を会社に伝えなくても退職自体は可能です。

法律上、無期雇用の退職については、民法627条1項が適用されます。

民法627条

当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

引用元:e-Gov 法令検索|民法

この条文では、退職の成立要件として「理由の説明」は定められていません

また、無期雇用の場合は理由を問わず退職の意思表示から2週間で退職をすることができるため、会社は退職理由を知る必要がありません。

したがって、無期雇用の場合、退職理由を会社に言わなくても退職自体は可能です。

有期雇用の場合に退職の理由を言わないのはNGか

有期雇用の場合は、退職の理由を言う必要がある場合があります

無期雇用と異なり、有期雇用の退職については民法628条が適用されます。

民法628条

当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。

条文によると、有期雇用の場合、無期雇用と異なり「やむを得ない事由」がなければ退職できません。

つまり、有期雇用で退職する場合は、会社側からすると「やむを得ない事由」があるかを判断するために理由を聞く必要性があります。

したがって、有期雇用の場合は、「やむを得ない事由」があるかを判断するという限度で、退職理由を言う必要があります。

理由を伝えるか否かという場合の他にも退職のルールは有期雇用と無期雇用とで大きな違いがあります
→有期雇用と無期雇用の違いについての詳細はこちら

依願退職の場合に退職の理由を言わないのはNGか

依願退職の場合も原則として退職の理由を言う必要がある場合があります。

そもそも、依願退職は、雇用契約の合意解約と解釈される場合が多いです。

そして、合意解約は契約をお互いが合意して解消するものであるため、会社側も退職に合意する必要があります。

つまり、会社は退職に合意するかを判断する必要があるため、その判断をするために、退職の理由を伝える必要性があります。

したがって、依願退職の場合は、退職の理由を伝える必要がある場合があります。

会社が退職理由を聞いてくるのは違法なのか?

では、会社から退職の理由を聞かれることは違法になるのでしょうか。

退職理由を「聞くこと」自体は違法ではない

法律上、会社が労働者に対して退職理由を質問すること自体を禁止する規定はありません。

したがって、業務の引き継ぎや人事管理の一環として理由を尋ねることは、直ちに違法とは言えません

聞き方によっては問題となる可能性がある

退職理由の説明を、高圧的な態様で求めるような場合には、違法となる可能性があります。

労働基準法5条

使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によつて、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。

参照 e-Gov法令検索 労働基準法

労働基準法には、以上のような条文があり、労働者の意思に反して強制的に労働をさせることを禁止しています。

そして、退職理由を聞くことは、場合によっては労働者の退職の自由を実質的に制限する行為となる可能性があります。

具体的には、退職理由を高圧的な態度で求めたり、理由を言わないと退職を認めないと示唆する場合です。

このような場合には、言いにくい退職理由を無理やり言わせていると言えるため、労働基準法5条に反する可能性があります。

もっとも、どこからが違法と評価されるかは、個別の事実関係に強く左右されます。

したがって、一律に断定することはできません。

退職理由を言わなかった場合どのような扱いになるのか?

では、退職の理由を言わなかった場合にはどのような扱いとなるのでしょうか。

退職が無効になることは少ない

原則として、退職の理由を言わなかった場合でも、法律上、退職が無効にはなりません

前述のとおり、退職は理由の説明を要件としていないため、原則として、退職理由を言わなかったこと自体で退職が無効になることはありません

ただし、有期雇用の場合は、「やむを得ない事由」があるかを判断するために、退職理由を聞く必要があり、理由がないと退職の可否を判断できない可能性があるため注意が必要です。

事実上の影響については一概には言えない

一方で、退職理由を伝えなかった場合に、会社との関係が悪化したり引き継ぎが円滑に進まなかったりするといった事実上の影響が生じる可能性は否定できません。

したがって、法律上理由を言う必要はなくとも、事実上の理由から理由を伝えた方が良い場合もあります。

ただし、理由は詳細なものでなく「一身上の都合」など抽象的なものでも構いません。

退職理由を伝える際の注意点

退職理由を伝える場合であっても、以下の点には注意が必要です。

  • 感情的な表現を避ける
  • 会社や上司を一方的に非難しない
  • 書面に残る場合は表現に特に注意する
  • 抽象的な理由でも構わない(特に無期契約の場合)

これらは法律上の義務ではありませんが、不要な紛争を避けるための留意点です。

退職理由をきっかけに強く引き止められた場合

退職理由を伝えた結果、「それなら辞める必要はない」「考え直すべきだ」などと強く引き止められるケースもあります。

このような、退職の引き止めがどこまで許されるのか、違法となる場合があるのかについては、以下の記事で詳しく解説しています。

退職の引き止めは違法?退職願を出したのに辞められない時の対処法

まとめ

本記事では、「退職理由は会社に言わないとダメ?聞かれた場合の法的扱いと注意点を解説」と題して解説しました。

  • 法律上、退職理由を会社に説明する義務は原則としてない(特に無期契約の場合)
  • 会社が理由を聞くこと自体は直ちに違法ではない
  • 原則として退職理由を言わなかったことのみで退職が無効になることはない
  • 不要なトラブルを避けるため、伝え方には注意が必要

退職は労働者に認められた重要な権利です。

理由を聞かれた場合、法的な位置づけを踏まえたうえで、冷静に対応することが大切です。

もしも、理由を伝えた際に、退職を拒否され退職できない場合は、一人で悩むことはなく、退職代行を使うのも一つの手です。

ただし、退職代行は違法な場合があるため、適切な業者を選ぶ必要があります。

そこで本サイトでは、退職代行が違法となるかについて詳しく解説しています。

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