「有期雇用と無期雇用の違いはどこにある?」といったような疑問を持った方も多いと思います。
この有期雇用と無期雇用の違いは、退職や雇止めといった重要な点で大きな意味を持ちます。
そこで、本記事では、弁護士が、有期雇用と無期雇用の違いについて、法律上の観点から詳しく解説します。
本記事は2026年9月時点の法令・公表情報に基づいて作成しています。個別の事案については、必ず弁護士にご相談ください。
有期雇用・無期雇用とは何か
まず、有期雇用と無期雇用のそれぞれの概要について解説します。
有期雇用
有期雇用とは、労働契約にあらかじめ契約期間が定められている雇用形態をいいます。
この有期雇用に多い契約形態としては、契約社員やパート・アルバイトなどがあげられます。
ただし、有期雇用か無期雇用かを判断するのは契約形態ではなく、あくまでも雇用契約に期間の定めがあるか否かによって判断するため注意が必要です。
無期雇用
無期雇用とは、雇用契約に契約期間の定めがない雇用形態をいいます。
一般的に正社員は無期雇用であることが多いです。
また、パートやアルバイトであっても無期雇用契約の場合もあるため、雇用契約書を確認するようにしましょう。
有期雇用と無期雇用の違い

以下で、有期雇用と無期雇用の違いについて解説します。
雇止めの有無
有期雇用と無期雇用の違いの一つ目は雇止めの有無です。
雇止めとは、契約期間が満了する際に、雇用契約の更新をしないことを指します。
有期雇用の場合、定められた期間で契約が満了し、雇用契約が更新されない可能性があるため、雇止めが行われる可能性があります。
ただし、会社がいつでも自由に雇止めをできるわけではありません。
労働契約法19条
有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合(中略)であって、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。
一 当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、(中略)解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。
二 当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。
つまり、契約が繰り返し更新されてきた場合や、更新されると期待することに合理的な理由がある場合には、雇止めをするにも合理的な理由が必要になります。
これを雇止め法理といい、有期雇用であっても、更新の実態によっては、無期雇用と同様に簡単に契約を打ち切れないことになります。
一方で、無期雇用の場合は、契約期間の定めがないため、契約期間が満了するといったことはなく、雇止めという概念自体が存在しないことになります。
このように、有期雇用と無期雇用には雇止めの有無という違いがあります。
解雇が認められる要件
有期雇用と無期雇用の違いの二つ目は解雇が認められる要件です。
まず、無期雇用の場合の解雇には解雇権濫用法理が適用され、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当といえる場合でなければ解雇できません(労働契約法16条)。
参照 e-Gov 法令検索 労働契約法
この要件を、裁判所は厳しく解釈しているため、無期雇用の場合の解雇は重大な事由がない限り違法となります。
一方で、有期雇用の場合は、やむを得ない事由がある場合でなければ、契約期間中に解雇することはできません(労働契約法17条)。
そして、このやむを得ない事由については、無期雇用の解雇の場合よりも厳しく解釈するとされています。
参考 厚生労働省 労働契約の終了に関するルール
つまり、有期雇用の場合、無期雇用の場合よりも解雇が難しくなります。
やむを得ない事由の例としては、けがや病気により労働が困難になった場合や、著しく重大な非違行為があった場合があげられます。
このように、有期雇用と無期雇用では、解雇ができる場合に差があるといえます。
アルバイトやパートの解雇については、「アルバイトをクビと言われた…これって違法?知っておくべき解雇のルールと対処法」で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
無期転換ルール(5年ルール)の有無
有期雇用と無期雇用の違いの三つ目は無期転換ルールの有無です。
これは、有期雇用で働く方にとって最も重要なルールの一つですので、詳しく解説します。
労働契約法18条1項
同一の使用者との間で締結された二以上の有期労働契約(中略)の契約期間を通算した期間(次項において「通算契約期間」という。)が五年を超える労働者が、当該使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に、当該満了する日の翌日から労務が提供される期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたときは、使用者は当該申込みを承諾したものとみなす。
この条文によると、同じ会社との有期雇用契約が通算で5年を超えた場合、労働者が申し込むことで、無期雇用契約に転換できます。
ここで重要なのは、会社の同意は必要ないという点です。
条文上、労働者が申し込んだ時点で「使用者は当該申込みを承諾したものとみなす」とされているため、会社が拒否しても無期雇用への転換は成立します。
一方で、申込みをしなければ転換されない点にも注意が必要です。
つまり、5年を超えれば自動的に無期雇用になるわけではなく、労働者自身が申込みを行う必要があります。
また、転換後の労働条件は、原則として転換前と同一の労働条件(契約期間を除く)となります。
したがって、無期雇用に転換したからといって、当然に正社員と同じ待遇になるわけではない点は理解しておく必要があります。
自主退職の可否
有期雇用と無期雇用の違いの四つ目は自主退職の可否です。
無期雇用の場合、原則としていつでも退職することができます。
無期雇用の退職(雇用契約の解約)については、以下のように定められています。
民法627条1項
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
つまり、原則として、2週間前に退職の意思表示をすれば退職できるとされています。
このことからすると、無期雇用の場合、会社が退職を拒否したとしても、民法上の退職が有効にされたものとされます。
これに対し、有期雇用の場合はやむを得ない事由がある場合を除き、退職(雇用契約の解約)ができません(民法628条)。
有期雇用では、原則として契約期間満了まで雇用関係が継続すると考えられているため、退職が制限されます。
もっとも、契約期間が1年を超える有期雇用については、例外が定められています。
労働基準法附則137条
期間の定めのある労働契約(一定の事業の完了に必要な期間を定めるものを除き、その期間が一年を超えるものに限る。)を締結した労働者(中略)は、(中略)民法第六百二十八条の規定にかかわらず、当該労働契約の期間の初日から一年を経過した日以後においては、その使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができる。
つまり、契約期間が1年を超える有期雇用の場合、契約開始から1年が経過した後は、やむを得ない事由がなくても退職できます(専門的知識等を有する労働者や満60歳以上の労働者などは除きます)。
「有期雇用だから契約期間が終わるまで絶対に辞められない」と思い込んでいる方もいますが、契約期間によっては退職できる場合があります。
退職を会社に拒まれている場合の対応については、「退職の引き止めは違法?退職届を出したのに辞められない時の対処法を解説」で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. パートやアルバイトは必ず有期雇用になりますか?
いいえ。有期雇用か無期雇用かは、パート・アルバイトといった呼び方ではなく、雇用契約に期間の定めがあるかどうかで決まります。パートやアルバイトでも無期雇用契約である場合がありますので、雇用契約書や労働条件通知書を確認してください。
Q2. 無期転換すると正社員になれますか?
必ずしもそうではありません。無期転換した場合の労働条件は、原則として転換前と同一の労働条件(契約期間を除く)となります。したがって、契約期間の定めがなくなるだけで、給与や職務内容が当然に正社員と同じになるわけではありません。
Q3. 契約更新を何度も繰り返してきましたが、突然「次の更新はない」と言われました。受け入れるしかないのでしょうか?
受け入れるしかないとは限りません。契約が反復して更新されてきた場合や、更新されると期待することに合理的な理由がある場合には、雇止めにも客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要とされています(労働契約法19条)。心当たりのある方は、早い段階で弁護士にご相談ください。
まとめ
本記事では、有期雇用と無期雇用の違いについて、法律上の観点から解説しました。
有期雇用と無期雇用の違いは以下の通りです。
- 雇止めの有無(ただし有期雇用でも雇止め法理による制限がある)
- 解雇が認められる要件
- 無期転換ルール(5年ルール)の有無
- 自主退職の可否
このように、有期雇用と無期雇用では、法律上、様々な点で違いがあります。
トラブルが発生した場合は、自身の雇用形態に応じた対応をするように心がけましょう。
もっとも、雇止めや無期転換をめぐる問題は、契約書の記載だけでなく、更新の実態を踏まえた判断が必要になります。
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この記事の執筆者
本サイトを運営する弁護士(第一東京弁護士会所属)が執筆しています。


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