「36協定って何?」「最近、残業が多すぎるけど、上限は何時間?」
このような疑問を持つ方も多いと思います。
結論、36協定とは、会社が法定労働時間を超えて残業をさせるために、労働者側と結ぶ労使協定であり、残業時間の上限も36協定により定められます。
そこで、本記事では、弁護士が、36協定の概要、残業時間の上限と特別条項、残業代(割増賃金)、残業が違法となるケースを、法律に基づいてわかりやすく解説します。
本記事は2026年10月時点の法令・公表情報に基づいて作成しています。個別の事案については、必ず弁護士にご相談ください。
36協定とは
36協定とは、労働基準法36条に基づき、会社が労働者側と締結する「時間外・休日労働に関する協定」です。
労働基準法36条1項
使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては、(中略)その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。
このように、36協定の相手方は、過半数で組織する労働組合(ない場合は労働者の過半数を代表する者)です。
そして、協定を書面で結び、労働基準監督署に届け出て初めて、法定労働時間(原則1日8時間・週40時間)を超えて働かせることができます。
つまり、36協定は、残業の前提として、会社と労働者側が締結しなければならない協定であるといえます。
また、36協定においては、残業を命ずることができる場面や、1日・1か月・1年それぞれの残業時間の上限についても定めます(労働基準法36条2項3号及び4号)。
残業時間の上限は何時間?
ここからは、残業時間の上限について解説します。
なお、休日労働の上限については、「休日労働はどこまで許される?36協定と上限規制について解説」で詳しく解説していますので、併せてご覧ください。
法定労働時間(残業時間ではない通常の労働時間)
法定労働時間、つまり時間内の労働時間の上限は、原則として1日8時間及び1週間で40時間と定められています(労働基準法32条)。
つまり、この法定労働時間を超える労働が、法律上の時間外労働(残業時間)としてカウントされます。
なお、会社によっては、所定労働時間を1日7時間などと、法定労働時間より短く定めている場合があります。
この場合、7時間を超えて8時間までの労働は、法定労働時間の範囲内であるため、法律上の時間外労働にはあたりません(いわゆる法内残業)。
そのため、36協定の上限や、法律上の割増賃金の対象となるのは、あくまで法定労働時間を超えた部分です(もちろん、法内残業にも通常の賃金は支払われます)。
もっとも、就業規則や個別契約において、法内残業に対しても賃金が発生する旨が定められている場合は、会社は、残業代を支払う義務があるため、注意が必要です。
原則の上限:月45時間・年360時間

先ほど解説したように、残業は原則として36協定(労働基準法36条)がなければ行うことができません。
そして、36協定が締結された場合、残業時間の上限は36協定で定められた時間が上限となります。
ただし、36協定で自由に上限を決められるわけではありません。
労働基準法36条4項
前項の限度時間は、一箇月について四十五時間及び一年について三百六十時間(第三十二条の四第一項第二号の対象期間として三箇月を超える期間を定めて同条の規定により労働させる場合にあつては、一箇月について四十二時間及び一年について三百二十時間)とする。
このように、36協定で定めることのできる残業時間の上限は、原則として月45時間、年360時間であり、この時間を超えて残業時間を定めることはできません(対象期間が3か月を超える1年単位の変形労働時間制の場合は月42時間・年320時間)。
特別条項がある場合の上限
もっとも、通常予見することのできない業務量の大幅な増加などに備えて、36協定に特別条項を定めることで、上記の上限を超えて残業させることが認められています(労働基準法36条5項)。
ただし、特別条項を定めた場合でも、以下の上限をすべて守らなければなりません(労働基準法36条5項・6項)。
| 上限 | 対象となる時間 |
|---|---|
| 年720時間以内 | 時間外労働のみ |
| 月45時間を超えられるのは年6か月まで | 時間外労働のみ |
| 単月100時間未満 | 時間外労働+休日労働 |
| 2〜6か月の平均がいずれも80時間以内 | 時間外労働+休日労働 |
注意が必要なのは、「単月100時間未満」と「2〜6か月平均80時間以内」は、休日労働の時間も合算して判断される点です。
参照 e-Gov 法令検索 労働基準法
参考 厚生労働省 時間外労働の上限規制 わかりやすい解説
残業代(時間外労働の割増賃金)
36協定の範囲内の残業であっても、会社は残業代を支払わなければなりません。
法定労働時間を超える残業には、通常の賃金の25%以上の割増賃金を支払う必要があります(労働基準法37条1項)。
さらに、1か月の残業が60時間を超えた場合、その超えた部分の割増率は50%以上となります(同項ただし書)。
この「月60時間超は50%以上」というルールは、かつて中小企業には猶予されていましたが、2023年4月1日からは中小企業にも適用されています。
また、残業が深夜(原則として午後10時から午前5時まで)に及んだ場合は、深夜の割増(25%以上)も加わります。
参考 厚生労働省 確かめよう労働条件 残業、早出や休日出勤による割増賃金のチェック方法を教えてください。
残業代の具体的な計算方法は「残業代の計算方法とは?計算方法や請求できる場合について解説」、請求できる期間は「残業代の時効は何年?いつまで遡って請求できるかを弁護士が解説」で解説しています。
違法となる残業の例
以下では違法な残業の例を紹介します。
36協定を締結していないのに残業を命じる
企業が36協定を結んでいない、もしくは36協定の要件を満たしていないのに残業を命じることは、労基法違反にあたります。
36協定の締結・届出は残業をさせるための前提条件です。
36協定を締結していても上限を超えている
36協定を結んでいても、上述の上限時間を超えている場合は違法となります。
なお、労働時間は、事業場が異なる場合でも通算されます(労働基準法38条1項)。
特別条項を乱用している
特別条項を乱用している場合も違法となる可能性があります。
この特別条項は、通常予見することができない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に必要がある場合に用いられる(労働基準法36条5項)規定です。
また、厚労省は、特別条項を用いる場合であっても、限度時間にできるだけ近づける必要がある旨の言及をしています。
参考 厚生労働省 時間外労働の上限規制 わかりやすい解説
したがって、恒常的な人手不足など、予見できる理由で毎月のように上限を引き延ばすことは、特別条項の趣旨に反します。
残業代の支払いのない残業(サービス残業)
残業代の支払いのない残業、つまりサービス残業も違法となります。
労働基準法において、残業に対しては割増賃金の支払いを義務付けている(労働基準法37条1項)ことから、残業時間に応じて割増賃金の支払いを求めることができます。
違反した会社への罰則
これらの違反は、会社に対する刑事罰の対象にもなります。
労働基準法119条1号
次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金に処する。
一 (中略)第三十二条、第三十四条、第三十五条、第三十六条第六項、第三十七条、(中略)の規定に違反した者
つまり、36協定なく法定労働時間を超えて働かせること(32条違反)、上限規制を超えること(36条6項違反)、残業代を支払わないこと(37条違反)は、いずれも6か月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金の対象となり得ます。
よくある質問(FAQ)
Q1. 1日の残業時間に上限はありますか?
一般の業務については、法律で1日の残業の上限時間そのものは定められていません。ただし、36協定では1日・1か月・1年それぞれの残業時間を定める必要があり(労働基準法36条2項4号)、その協定で定めた時間を超えることはできません。なお、坑内労働など健康上特に有害な業務については、1日2時間までという上限があります(同条6項1号)。
Q2. 自分の会社の36協定の内容は確認できますか?
確認できます。会社は、36協定を作業場の見やすい場所への掲示や書面の交付などの方法で、労働者に周知しなければならないとされています(労働基準法106条1項)。上限時間が気になる場合は、まず会社の36協定を確認してみましょう。
Q3. みなし残業代(固定残業代)が支払われていれば、何時間でも残業させられますか?
いいえ。固定残業代が支払われていても、36協定の上限は変わりません。また、固定残業代に含まれる時間を超えて残業した場合は、その分の残業代を別途請求できる場合があります。詳しくは「固定残業代は違法?みなし残業代を超えた分の請求方法を解説」をご覧ください。
まとめ
本記事では、36協定の内容と残業時間の上限について解説しました。
- 36協定は残業の前提として締結・届出される
- 残業時間の上限は月45時間・年360時間が原則
- 特別条項でも年720時間以内、単月100時間未満、2〜6か月平均80時間以内が限度
- 残業代は25%以上、月60時間を超える部分は50%以上の割増
- 36協定が未締結、または上限を超える残業は違法で、罰則の対象にもなる
自身の残業時間が上限を超えていると感じた場合や、残業代が正しく支払われていないと感じた場合は、早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。
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この記事の執筆者
本サイトを運営する弁護士(第一東京弁護士会所属)が執筆しています。


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