「副業を始めたいけれど、会社が禁止しているから諦めるしかない」 「もしバレたら、クビになってしまうのだろうか?」
2018年の「副業元年」から数年が経過し、2026年現在、副業はもはやブームではなく「キャリア形成の標準」となりました。
しかし、依然として多くの企業では古い就業規則が残り、一律に副業を禁止している実態もあります。
そこで、本記事では、司法試験合格者が最新の法令・ガイドライン・裁判例に基づき、「副業禁止の違法性」の境界線と、現代のデジタル環境下で自分の身を守るための戦略を徹底解説します。
就業規則の「副業禁止」はどこまで有効か?
会社員の場合、副業の禁止は法律ではなく、就業規則に定められている場合がほとんどです。
では、就業規則で副業を禁止することは許されるのでしょうか。
結論、原則として、正当な理由がない限り、会社が従業員の副業を一律・全面的に禁止することは、認められません。
その理由は以下の通りです。
憲法が保障する「職業選択の自由」
その理由としては、憲法が職業選択の自由を保障していることがあげられます。
日本国憲法第22条では「職業選択の自由」が保障されています。
日本国憲法22条
何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
職業選択の自由とは、自己の職業を決定する自由をさすため、原則として、従業員が副業をするとしてもこれを妨げることはできません。
参考 厚生労働省 憲法22条に規定する職業選択の自由について
また、以下で解説するように、実際に、裁判所が職業選択の自由を尊重していると読める判断をしています。
このように、憲法が職業選択の自由を保障しているため、原則として、会社が従業員の副業を禁止することは認められません。
裁判例における副業への捉え方
裁判例においても、勤務時間外の副業について、原則として認めるべきであるとの判断がなされています。
マンナ運輸事件(京都地判平成24年7月13日)
労働者は、勤務時間以外の時間については、事業場の外で自由に利用することができるのであり、
使用者は、労働者が他の会社で就労(兼業)するために当該時間を利用することを、原則として許され
(ママ)なければならない。
裁判所は、勤務時間外の時間の使い方は自由であり、その時間に副業をすることを原則として許されなければならないと判断しています。
このように、裁判所が原則として副業を認めるべきと判断していることからも、会社が副業を禁止することは原則としてできないといえます。
副業の禁止や制限ができる(違法とはならない)3つの場面
上記のように、副業は原則として自由です。
しかし、無制限に許されるわけではありません。
厚生労働省や裁判例に基づくと、以下の3点に該当する場合、会社による副業の制限や懲戒処分は有効(適法)と判断される可能性があります。
労務の提供に支障をきたす場合(過労・居眠り)
まずは、副業に熱中するあまり、本業の業務に支障をきたす場合です。
労働契約には「誠実に労務を提供する義務」が含まれます。
したがって、深夜に及ぶ副業や本業のパフォーマンスを著しく下げるような長時間労働を伴う副業は、誠実に労務を提供する義務に反し、制限が適法となる可能性があります。
現に、小川建設事件では、深夜の6時間の副業について、誠実に労務を提供する義務に反し、無断でこのような副業をしたことを理由とする解雇は有効と判断しています。
参考 厚生労働省 副業・兼業の促進に関するガイドライン
企業秘密の漏洩
企業秘密を漏洩する態様の副業は制限の対象となる可能性が高いです。
ほとんどの場合、雇用契約において秘密保持義務が課されています。
したがって、企業秘密を漏洩する態様の副業は、雇用契約に反する可能性が高いです。
企業秘密を漏洩する態様の行為の具体例は、本業で得た顧客リスト、独自の技術、未公開のプロジェクト情報などを副業で利用する行為です。
このような副業を行った場合、懲戒解雇といった極めて厳しい処分が下されるリスクがあります。
本業と副業が競合する場合
本業と副業が競業する場合も、禁止される副業の対象となる可能性が高いです。
競業とは、同業他社で働いたり、本業と同様の事業を行う会社を設立したりする場合をさします。
つまり、本業とライバル関係にある事業を行うことをさします。
競業を行うと、会社の顧客やノウハウが流用され、会社に悪影響を及ぼす可能性があるため、禁止が正当化されます。
したがって、副業をする際は、本業の会社と異なる事業を行う方が無難です。
実際に、裁判例においても、競業避止義務に反する態様の副業を行ったことによる解雇が認められているケースが多くあります。
参考 厚生労働省 副業・兼業の促進に関するガイドライン
AI・デジタル時代の「新・副業トラブル」
最近のAI及びデジタル環境ならではの副業に関する留意点を解説します。
AI活用による「時短副業」と職務専念義務
現在はAIツールを駆使し、短時間で高収益を得る副業が可能になりました。
しかし、これにより、職務専念義務にさらに配慮をする必要があります。
上記のように、職務専念義務により、本業の時間中は本業に専念しなければなりません。
たとえ少しの時間でも、本業の業務時間中に、副業の指示をAIに出す行為は、職務専念義務違反とされるリスクがあります。
したがって、本業の時間中は、副業に関する一切の行為を行わないようにしましょう。
会社資産(ツール・ノウハウ)の私的利用
また、会社が契約しているAIツールを副業で私的利用する行為もしないようにしましょう。
AIが会社にも普及しつつあるため、会社が契約している有料AIツールのライセンスや、社内で蓄積された独自の「プロンプト(指示文)」を副業に流用するという事態が想定できます。
しかし、これらは会社資産の私的利用にあたり、懲戒処分の有力な根拠となり得ます。
したがって、本業と副業の環境は完全に切り離すことが鉄則です。
副業を不当に禁止されないための具体策
会社に副業を不当に禁止されないためには、以下のような方法を取りましょう。
副業について会社の同意を得る
まずは、副業について会社の同意を得ることを心がけましょう。
厚生労働省や裁判例が示す通り、副業は原則として自由です。
実際に、厚生労働省も、以下のように述べています。
副業・兼業に関する裁判例においては、
・ 労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは、基本的には労働者の自由であること
・ 例外的に、労働者の副業・兼業を禁止又は制限することができるとされた場合としては
① 労務提供上の支障がある場合
② 業務上の秘密が漏洩する場合
③ 競業により自社の利益が害される場合
④ 自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合
が認められている。このため、就業規則において、
・ 原則として、労働者は副業・兼業を行うことができること
・ 例外的に、上記①~④のいずれかに該当する場合には、副業・兼業を禁止又は制限することがで
きることとしておくこと
が考えられる。
参考 厚生労働省 副業・兼業の促進に関するガイドライン
このように、原則として副業は認められるべきであるという前提に立っていることから、これを根拠に、会社に対して同意を求めることが最も速やかな方法です。
本業に「実害がないこと」を説明する
上記のように、会社が副業を制限できる場合は、会社に何かしらの実害が生じる可能性がある場合です。
そこで、会社に副業について説明を求められた場合は以下のように実害がないことを説明しましょう。
- 本業の評価(KPI)が維持・向上している
- 副業は本業の時間外(土日や夜間)に行っている
- 競業他社ではなく、機密保持も徹底している
また、これらの事実を客観的なデータとともに提示できるようにしておきましょう。
副業を行う際の労働時間の注意点
副業を行う際は、労働時間の通算に注意が必要です。
本業と副業が双方とも雇用契約の場合、双方の労働時間が通算されます。
参考 副業・兼業における労働時間の通算について(労働時間通算の最も原則的な方法)
一方、どちらかが雇用契約ではない場合(副業は自ら事業を行っている場合など)は労働時間は通算されません。
つまり、双方とも雇用契約の場合、本業で働きすぎた場合は副業ができなくなる可能性があります。
したがって、労働法上の労働時間について把握し、注意しながら働く必要があります。
まとめ
副業は原則として自由です。
「副業禁止」という言葉の裏には、法的根拠のない古い慣習が隠れていることが少なくありません。
しかし、会社との不要な対立を避け、安心して副業を行うためには、以下の3点を徹底しましょう。
- 本業の職務に専念する
- 本業に一切の実害(パフォーマンス低下、情報漏洩)を出さない
- 万が一の際に備え、自身の働き方が適法であることを記録しておく
AIが普及しつつある現代は、副業も効率的に行うことができます。
副業を行う際は、法的な視点を忘れることなく、賢く立ち回りましょう。

コメント