賃貸物件を探していると、定期建物賃貸借契約という言葉を見かけ、通常の賃貸借契約と何が違うのか分からず不安になったことはないでしょうか。
定期建物賃貸借契約は、普通建物賃貸借契約とは更新の仕組みが異なり、契約内容をよく理解しないまま契約すると、予定より早く退去を求められることにもなりかねません。
そこで、この記事では、弁護士が、定期建物賃貸借契約と普通建物賃貸借契約の違いについて解説します。
本記事は2026年9月時点の法令・公表情報に基づいて作成しています。 個別の事案については、必ず弁護士にご相談ください。
定期建物賃貸借契約と普通建物賃貸借契約とは
建物の賃貸借契約は、借地借家法上、大きく普通建物賃貸借契約と定期建物賃貸借契約の2つに分かれます。
普通建物賃貸借契約とは
まず、普通建物賃貸借契約とは、一般的な建物の賃貸借契約であり、期間が満了しても、原則として契約が更新されます。
借地借家法26条1項
建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の一年前から六月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。
このように、貸主が更新を拒絶するには、期間満了の1年前から6か月前までに通知をしたうえで、正当事由が必要とされています。
賃借権や賃貸借契約をめぐるその他のトラブルについては、「賃借権の譲渡とは?無断譲渡は契約解除できるかを弁護士が解説」もあわせてご覧ください。
定期建物賃貸借契約とは(更新がない契約)
これに対して、定期建物賃貸借契約とは、契約で定めた期間が満了すると、更新されることなく確定的に契約が終了する賃貸借契約です。
借地借家法38条1項
期間の定めがある建物の賃貸借をする場合においては、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、第三十条の規定にかかわらず、契約の更新がないこととする旨を定めることができる。
貸主が取り壊し予定の建物を貸す場合など、あらかじめ入居期間を区切りたい事情がある場合に活用されることが多い契約類型です。
定期建物賃貸借契約と普通建物賃貸借契約の違い
では、両者は具体的にどのような点で異なるのでしょうか。
契約更新の有無
最大の違いは、契約更新の有無です。
普通建物賃貸借契約は、貸主に正当事由がない限り更新され続けるのに対し、定期建物賃貸借契約は、期間満了により確定的に終了し、更新されません。
普通建物賃貸借契約における更新拒絶の正当事由は、次のように定められています。
借地借家法28条1項
建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。
このように、普通建物賃貸借契約では貸主側の都合だけで更新を拒絶することはできません。
したがって、貸主から見ると、定期建物賃貸借契約の方が確実に契約を終了させやすいと言えます。
契約の要式(書面・事前説明義務)
次に、契約の締結方法にも違いがあります。
普通建物賃貸借契約は口頭でも成立し得ます(実務上は契約書を締結することがほとんどです)が、定期建物賃貸借契約は、前述の書面によって契約する必要があります。
さらに、定期建物賃貸借契約では、貸主が借主に対し、契約の更新がなく期間満了で終了することを、あらかじめ書面を交付して説明することが義務付けられています。
借地借家法38条3項
建物の賃貸人は、あらかじめ、建物の賃借人に対し、同項の規定による建物の賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて、その旨を記載した書面を交付して説明しなければならない。
そして、この説明がないと、契約の更新がないこととする定めは無効とされるため、オーナーとしては、説明文書の内容にも注意が必要です。
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中途解約の可否
さらに、契約期間の途中で借主から解約できるかどうかにも違いがあります。
普通建物賃貸借契約では、契約書に中途解約に関する条項があれば、賃借人はそれに従って解約することができます。
(賃貸人からの解約は、6か月以上前の通知や正当事由が必要です。)
これに対して、定期建物賃貸借契約は、原則として、賃借人からの期間内の中途解約ができません。
ただし、床面積200平方メートル未満の居住用建物については、やむを得ない事由がある場合に、借主からの中途解約が認められています。
借地借家法38条7項
第一項の規定による居住の用に供する建物の賃貸借(床面積(建物の一部分を賃貸借の目的とする場合にあっては、当該一部分の床面積)が二百平方メートル未満の建物に係るものに限る。)において、転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情により、建物の賃借人が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったときは、建物の賃借人は、建物の賃貸借の解約の申入れをすることができる。
この解約の申入れが認められた場合、申入れの日から1か月を経過することによって、賃貸借契約は終了するとされています。
定期建物賃貸借契約で特にトラブルになりやすい点
ここからは、定期建物賃貸借契約で実務上トラブルになりやすい点を紹介します。
事前説明を受けていない場合
まず、よくあるトラブルとして、更新がない旨の説明がなされていない場合があげられます。
貸主が前述の事前説明を怠っていた場合、契約の更新がないこととする旨の定めそのものが無効となります。
借地借家法38条5項
建物の賃貸人が第三項の規定による説明をしなかつたときは、契約の更新がないこととする旨の定めは、無効とする。
この場合、契約自体が無効になるわけではなく、更新がないという特約だけが無効となり、普通建物賃貸借契約として扱われることになります。
したがって、オーナーとしては、説明をした書面を保管し、このトラブルを防止するよう心掛ける必要があります。
再契約の可否と賃料交渉
また、定期建物賃貸借契約は期間満了により終了しますが、貸主と借主が合意すれば、改めて新たな定期建物賃貸借契約(再契約)を締結することは可能です。
もっとも、再契約はあくまで新たな契約であるため、貸主には再契約に応じる義務はなく、賃料などの条件も改めて協議することになります。
「これまで自動的に更新されてきたから今後も同様だろう」と考えていると、契約終了時に思わぬトラブルとなるおそれがあるため注意が必要です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 普通建物賃貸借契約から定期建物賃貸借契約への切り替えは可能ですか?
居住用建物については、賃借人の合意があれば、既存の普通建物賃貸借契約を合意解除したうえで、改めて定期建物賃貸借契約を締結することは可能とされています。
Q2. 定期建物賃貸借契約なのに事前説明を受けていません。契約は無効ですか?
契約自体が無効になるわけではなく、更新がないという特約のみが無効となり、普通建物賃貸借契約として扱われます。そのため、期間が満了しても、正当事由がない限り契約は継続することになります。
Q3. 定期建物賃貸借契約は途中で解約できませんか?
原則として、契約書に中途解約条項がない限り、期間内の解約はできません。ただし、居住用で床面積200平方メートル未満の建物については、転勤や療養などやむを得ない事情がある場合に限り、法律上の中途解約が認められています。
まとめ
本記事では、定期建物賃貸借契約と普通建物賃貸借契約の違いについて解説しました。
- 最大の違いは契約更新の有無であり、定期建物賃貸借契約は期間満了により確定的に終了する
- 定期建物賃貸借契約は公正証書等の書面が必要で、更新がないことの事前説明義務もある
- 事前説明を怠ると、更新がないという特約自体が無効となる
- 居住用200平方メートル未満の建物では、やむを得ない事情による中途解約が認められる
定期建物賃貸借契約は、通常の賃貸借契約と異なるルールが多く、契約書や説明書面の内容によって法的な効力が左右される場面が少なくありません。
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この記事の執筆者
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