何度催促しても、相手がお金を払ってくれない。契約の解除や退職の意思を、確実に相手に伝えたい。
このような、相手に法的な請求を行う時に使用するのが内容証明ですが、いざ自分で送ろうとすると、何をどのように書けばよいのか分からない方も多いのではないでしょうか。
しかし、形式のルールを守らなければ郵便局で受け付けてもらえず、また、本文の書き方を誤ると、請求内容が伝わらなかったり、かえって相手との関係をこじらせたりするおそれがあります。
そこで、この記事では、弁護士が、内容証明の書き方について、文例を交えて解説します。
本記事は2026年10月時点の法令・公表情報に基づいて作成しています。 個別の事案については、必ず弁護士にご相談ください。
内容証明とは
内容証明(内容証明郵便)とは、いつ、どのような内容の文書を、誰から誰あてに差し出したかを、日本郵便が証明する郵便サービスです。
文書の内容を郵便局が証明する制度
まず、内容証明は、郵便法に定められた制度です。
郵便法48条1項
内容証明の取扱いにおいては、会社において、当該郵便物の内容である文書の内容を証明する。
もっとも、郵便局が証明するのは「その文書を送ったこと」と「その内容」であり、書かれている内容が真実であることまで証明するものではないため、注意が必要です。
内容証明を送る主なメリット
次に、内容証明を送る主なメリットは、①証拠としての価値が高い点及び、②相手に本気度が伝わる点です。
まず①については、上記のように、日本郵便が文書の内容を証明してくれるため、証拠としての価値が高く、実務上でもよく用いられます。
②については、内容証明というフォーマルな文書を送ることで、相手からすると、本気で請求を受けていると感じるため、相手に本気度を伝えることができます。
現に、弁護士が相手方に何らかの請求を交渉により行う場合は、最初のアクションとして、内容証明を送付することが多いです。
配達証明を付けて内容証明の到達を証明することができる
また、配達証明を付けることにより、文書が相手に届いたことについても証明できます。
契約の解除などの意思表示は、相手に届いた時に効力が生じるため、内容証明が届いたことを証明する必要があります。
民法97条
1 意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。
2 相手方が正当な理由なく意思表示の通知が到達することを妨げたときは、その通知は、通常到達すべきであった時に到達したものとみなす。
そのため、内容証明を送るときは、配達した事実と日付を証明する「配達証明」を必ず付けておくことをおすすめします。
配達証明を付けると、配達した日付などが記載されたはがきが、後日、差出人に届きます。
参考 日本郵便 内容証明は、相手が受け取ったことも証明もしてくれますか?
退職の意思表示を内容証明で送るケースについては、「退職届が受理されないとどうなる?放置された場合の退職日・出社義務を解説」もご覧ください。
内容証明の形式面の書き方
ここからは、内容証明の具体的な書き方を解説します。
まずは、郵便局で受け付けてもらうために守るべき、形式面のルールです。
同じ文書を3通用意する
内容証明を送るには、相手に送る文書(内容文書)1通と、その写し(謄本)2通の、合計3通を用意します。
謄本は、差出人と郵便局が1通ずつ保管するものです。
用紙の大きさや筆記用具に決まりはなく、パソコンで作成して印刷したものや、コピーで作成したものでも構いません(ただし、下記のとおり字数制限があります)。
字数・行数の制限
次に、謄本には、次のとおり字数・行数の制限があります。
| 書き方 | 字数・行数の制限(いずれか) |
|---|---|
| 縦書き | 1行20字以内、1枚26行以内 |
| 横書き | 1行20字以内、1枚26行以内 1行13字以内、1枚40行以内 1行26字以内、1枚20行以内 |
なお、句読点やかっこなどの記号も1字として数えます(かっこは、始めと終わりを合わせて1字です)。
上記文字・行数制限を遵守すると、通常の文書や郵便物に比べ、字が大きく、文字の間隔が広く感じる方が多いです。
使える文字と記号
また、内容証明に使える文字は、仮名・漢字・数字・括弧・句読点、一般に記号として使われるものに限られます。
英字は、固有名詞に限られるため、注意が必要です。
訂正の方法と、2枚以上になる場合の契印
さらに、謄本の文字を訂正・挿入・削除するときは、その字数と箇所を欄外または末尾の余白に記載し、差出人の印を押します。
また、謄本が2枚以上になる場合は、つづり目に契印(ページをまたいで押す印)を押します。
文書以外のものは同封できない
最後に、内容証明で送れるのは文書1通のみです。
請求書のコピーや図面、返信用封筒などを同封することはできません。
内容証明の書き方(本文に書くべき内容)
次に、内容証明の本文に記載するべき内容について解説します。
内容証明は、後に証拠として使うことを考えると、下記の点を押さえておく必要があります。
表題・日付・差出人と受取人
まず、冒頭に「通知書」「催告書」などの表題を付けた上で、作成日についても記載します。
そして、受取人と差出人の住所・氏名(会社の場合は会社名と代表者名及び会社の住所)を記載し、差出人の印を押します。
事実関係と請求の内容を書く
次に、どのような事実に基づいて、相手に何を求めるのかを具体的に記載します。
たとえば金銭の請求であれば、契約の日付や内容、金額、支払期日を特定し、「いつまでに、いくらを、どの方法で支払ってほしいのか」が一読して分かるように書くことが重要です。
この際、どのような事実関係に基づいて、どのような法的な根拠で請求するのかについて記載することが多いです。
もっとも、実務上、最初に送る内容証明には、交渉のテーブルにのせるという意味を持たせる場合や、先に相手方に具体的な主張をしてほしい場面もありますので、どの程度事実関係や法的根拠を具体化して書くかどうかは、事案によって異なります。
回答の期限と、期限を過ぎた場合の対応
また、「本書面到達後7日以内に」といった期限を設け、期限内に対応がない場合には法的手続きを検討していることを伝えます。
期限を示すことで、相手に対応を促すとともに、次の手続きに進むタイミングを明確にすることができます。
回答期限については、実務上さまざまであり、請求内容によって異なるため、留意が必要です。
書いてはいけないこと
一方で、内容証明は後に証拠として裁判所に提出されることもあるため、次のような記載は避けるべきです。
- 相手を脅すような表現や、感情的な非難
- 事実と異なる内容や、裏付けのない推測
- 根拠のない過大な金額の請求
- 自分に不利な事実を認めてしまう記載
特に、相手を畏怖させるような表現や過大な請求は、かえってこちらが法的責任を問われるおそれがあるうえ、交渉が進まない原因にもなります。
内容証明の文例:未払い報酬の支払いを求める場合
ここまでの解説を踏まえた内容証明の文例を紹介します。
実際に作成する際は、前述の字数・行数の制限に合わせて体裁を整えてください。
通知書
私は、貴社との間で、令和○年○月○日付けで業務委託契約(以下「本契約」という。)を締結しているところ、同年○月○日、貴社に対して、本契約○条に定める成果物を納品しました。
本契約では、報酬金○○万円を同年○月○日までに支払うこととされていますが、本書面作成日現在、貴社よりお支払いを受けておりません。
つきましては、本書面到達後7日以内に、上記報酬金○○万円を下記口座にお振り込みいただくよう請求します。
万一、上記期限までにお支払いがない場合は、やむなく法的手続きによる解決を図らざるを得ないと考えておりますので、念のため申し添えます。
(振込先口座)○○銀行○○支店 普通預金 口座番号○○○○○○○ 名義○○○○
令和○年○月○日
(受取人)東京都○○区○○ 株式会社○○ 代表取締役 ○○○○ 殿
(差出人)東京都○○区○○ ○○○○ 印
上記文案は、業務委託契約において、報酬が支払われないことを想定しています。
報酬未払いへの対応の全体像は、「【個人事業主の報酬未払い】
また、本サイトを運営する弁護士は、内容証明の作成や、
書き方に不安がある方や、弁護士を通して交渉を進めたい方は、下記のフォームからお問い合わせください。
内容証明の送り方
では、作成した内容証明は、どのように送ればよいのでしょうか。
郵便局の窓口から送る
まず、内容証明は、すべての郵便局で扱っているわけではなく、集配郵便局など取扱局が限られています。
特定の曜日のみ扱う郵便局もあるため、事前に確認しておくと良いでしょう。
窓口には、次のものを持参します。
- 内容文書1通と謄本2通
- 差出人と受取人の住所・氏名を書いた封筒
- 差出人の印鑑(日本郵便も念のため持参するよう勧めています)
- 郵便料金
料金は、謄本1枚・定形郵便物の場合、郵便料金110円、一般書留の加算料金480円、内容証明の加算料金480円の合計1,070円です。
配達証明(差出し時350円)を付けると1,420円になります。
なお、差出人は、差し出した日から5年以内であれば、郵便局に保管されている謄本の閲覧を請求することができます。
e内容証明(電子内容証明)で送る
次に、日本郵便の「e内容証明」を使えば、インターネットから24時間、内容証明を送ることができます。
指定の雛形を使ってWordで作成した文書をアップロードすると、印刷から発送までを日本郵便が行い、差出人には謄本が届きます。
郵便局に行く必要がなく、文字数が多い場合は窓口より安くなることもあるため、非常に使い勝手が良いといえます。
内容証明を送った後の流れ
最後に、内容証明を送った後の対応について解説します。
相手が受け取らなかった場合
相手が不在で受け取らず、郵便局での保管期間が過ぎた場合や、受取りを拒否した場合には、内容証明は差出人に返送されます。
もっとも、前述の民法97条2項のとおり、相手が正当な理由なく受取りを拒んだような場合には、通常届くはずだった時に届いたものとみなされることがあります。
また、実務上は、同じ内容の文書を特定記録郵便でもあわせて送っておく方法がとられることがあります。
期限までに対応がない場合
期限を過ぎても相手が対応しない場合には、内容に応じて、次の手続きに進むことや再度内容証明を送付するといった対応が考えられます。
内容証明による催告で時効の完成が猶予されるのは6か月間に限られるため、時効が迫っている場合は、その間に次の手続きを取る必要があります。
よくある質問(FAQ)
Q1. 内容証明は手書きでなければいけませんか?
手書きである必要はなく、パソコンで作成して印刷したものでも構いません。用紙の大きさや筆記用具にも決まりはありませんが、謄本の字数・行数の制限は守る必要があります。
Q2. 内容証明は自分で送れますか?弁護士に依頼すべきですか?
内容証明は、本人が自分で作成して送ることができます。ただし、相手との交渉が予想される場合や、法的な主張の組み立てが必要な場合には、弁護士に作成を依頼したり、弁護士名義で送付したりすることで、相手が対応に応じやすくなることもあります。
Q3. メールやLINEで請求するのと、何が違いますか?
メールやLINEでも請求の記録は残りますが、内容証明は、どのような内容の文書をいつ送ったかを日本郵便が証明する点に違いがあります。配達証明を付ければ相手に届いた日も証明できるため、後の手続きで証拠として使いやすくなります。
まとめ
本記事では、内容証明の書き方について、送る側の視点から解説しました。
- 内容証明は、文書の内容と差し出した日を日本郵便が証明する制度である
- 内容文書1通と謄本2通を用意し、謄本は字数・行数の制限を守って作成する
- 本文には、事実関係、請求内容、期限を具体的に書き、脅迫的な表現は避ける
- 配達証明を付けて、相手に届いたことも証明できるようにする
内容証明は自分で作成することもできますが、場面に応じて何をどこまで書くかを、戦略的に変える必要があります。
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送る内容に迷う場合は、早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。相談を希望する方は以下のフォームからご連絡ください。
この記事の執筆者
本サイトを運営する弁護士(第一東京弁護士会所属)が執筆しています。


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