近年、セクハラに対する意識が高まっており、企業内でセクハラの申告がある場面をよく目にします。
会社側としては、セクハラの申告に対して、セクハラの定義に基づき、適切な対応を取る必要があります。
そこで、この記事では、弁護士が、セクハラの定義とは何か、該当する言動とセクハラ対策として会社が負う義務について解説します。
労働者からセクハラが原因で労働審判の申立てがされた場合はこちらの記事もご覧ください
本記事は2026年9月時点の法令・公表情報に基づいて作成しています。 個別の事案については、必ず弁護士にご相談ください。
セクハラ(セクシュアルハラスメント)の定義
セクハラとは、職場において行われる、労働者の意に反する性的な言動により、労働者が労働条件について不利益を受けたり、就業環境が害されたりすることをいいます。
参照 厚生労働省 事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針
この考え方は、男女雇用機会均等法にも反映されています。
男女雇用機会均等法11条1項
事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
セクハラの定義における「職場」「労働者」「性的な言動」の意味
まず、ここでいう「職場」とは、通常の勤務場所だけでなく、出張先や、実質的に業務の延長と考えられる宴会なども含まれます。
次に、「労働者」には、正社員だけでなく、契約社員やパートタイム労働者など、雇用形態を問わず、事業主が雇用するすべての労働者が含まれます。
また、「性的な言動」には、必要なく身体に触れることや性的な関係の強要といった行動は当然ながら、性的な事実関係を尋ねることや性的な冗談・からかい、食事やデートへのしつこい誘いといった発言も含まれます。
参考 厚生労働省 あかるい職場応援団 セクシュアルハラスメントとは
セクハラの行為者・被害者になり得る人
セクハラの行為者は、上司や同僚に限られず、取引先や顧客なども該当し得ます。
また、男性から女性に対するものに限らず、女性から男性、同性間の言動もセクハラに該当します。
被害者の性的指向や性自認にかかわらず、性的な言動はセクハラに該当し得るため注意が必要です。
セクハラの2つの類型(対価型・環境型)
セクハラは、一般的に「対価型」と「環境型」の2つに分類されます。
対価型セクシュアルハラスメント
対価型セクハラとは、労働者の意に反する性的な言動に対して拒否や抵抗をしたことにより、その労働者が解雇、降格、減給といった不利益な取扱いを受けることをいいます。
つまり、労働者の拒否と不利益な処遇との間の因果関係がある場合をさします。
たとえば、上司から性的な関係を要求されたことを拒否したところ、望まない部署へ配置転換されたようなケースが挙げられます。
環境型セクシュアルハラスメント
環境型セクハラとは、労働者の意に反する性的な言動により就業環境が不快なものとなり、労働者の能力の発揮に重大な悪影響が生じるなど、見過ごせない程度の支障が生じることをいいます。
直接的な不利益取扱いがなくても、職場での度重なる身体接触や、性的なうわさの流布によって就業意欲が低下しているような場合は、環境型セクハラに該当し得ます。
参考 厚生労働省 あかるい職場応援団 セクシュアルハラスメントとは
セクハラに該当するかどうかの判断基準
では、どのような言動がセクハラに該当するのかについて解説します。
セクハラの定義に含まれている「労働者の意に反する性的な言動」及び「就業環境を害される」の判断について、以下のように示しています。
「労働者の意に反する性的な言動」及び「就業環境を害される」の判断に当たっては、労働者の主観を重視しつつも、事業主の防止のための措置義務の対象となることを考えると一定の客観性が必要である。
具体的には、セクシュアルハラスメントが、男女の認識の違いにより生じている面があることを考慮すると、被害を受けた労働者が女性である場合には「平均的な女性労働者の感じ方」を基準とし、被害を受けた労働者が男性である場合には「平均的な男性労働者の感じ方」を基準とすることが適当であること。
ただし、労働者が明確に意に反することを示しているにもかかわらず、さらに行われる性的言動は職場におけるセクシュアルハラスメントと解され得るものであること。
上記を踏まえると、セクハラに該当するか否かについては、被害者の主観をまず重視するとしています。
したがって、加害者が単なる会話のつもりで、セクハラだと思わなかったとしても、セクハラに該当する可能性があります。
ただし、上記のように、セクハラに該当するか否かは、被害者の主観だけではなく、客観性も必要とされています。
したがって、平均的な労働者の感じ方が基準とされるため、被害者の主観のみではセクハラには該当しない点に留意が必要です。
会社(事業主)が負う対応義務
前述の男女雇用機会均等法11条1項により、事業主には、セクハラを防止し、適切に対応するための措置を講じる義務があります。
具体的には、次のような措置を講じることが求められています。
参照 厚労省 事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針
方針の明確化と周知・啓発
まず、セクハラに関する方針を明確化し、管理職を含む労働者に周知・啓発することが求められます。
この周知・啓発の方法としては、就業規則や社内報に記載することや、社内研修にて周知するといった方法が考えられます。
周知内容としては、職場におけるセクハラの内容、性別役割分担意識に基づく言動がセクシュアルハラスメントの発生の原因や背景となり得ること及び職場におけるセクシュアルハラスメントを行ってはならない旨を伝えるということが考えられます。
相談体制の整備
次に、相談窓口をあらかじめ定め、労働者からの相談に対して、その内容や状況に応じ適切に対応できる体制を整えることが求められます。
具体的には、まず、相談の窓口をあらかじめ定め、労働者に周知することが考えられます。
この相談窓口は、弁護士等の外部機関が行うこともあります。
そして、ただ相談窓口を設置するのみではなく、担当者が、相談に対し、その内容や状況に応じ適切に対応できるようにする必要があります。
相談窓口の担当者が適切に対応できるようにするために、担当者に十分な研修を行うことも、体制整備の一環として考えられます。
セクハラに対する事後の迅速かつ適切な対応
また、事業主はセクハラの相談があった場合、その事案に係る事実関係の迅速かつ正確な確認及び適正な対処を行うことが求められます。
具体的には、まず、事実関係について十分に精査する必要があります。
その際は、関係者から中立的な立場で広くヒアリングを行い、事実の認定をします。
次に、セクハラの事実が確認できた場合においては、速やかに被害者に対する配慮のための措置を行う必要があります。
そして、セクハラの事実が認定できた場合、行為者に対しても懲戒等の適切な措置を講じます。
最後に、セクハラが起きた原因を分析し、再度同様の事案が発生しないように対策を講じることが求められます。
なお、関係者が多いといった、複雑な事実認定が必要となる場合、弁護士などの第三者が事実認定の結果を客観的な視点で確認したり、弁護士が事実認定を行う場合もあります。
当サイトを運営する弁護士は、このハラスメントの事実認定のサポートも対応可能ですので、下記フォームからご相談ください。
プライバシーの保護と不利益取扱いの禁止
また、事業者は、申告者のプライバシーを保護する体制を整えることや、申告をしたことによる不利益取り扱いをしないように体制を構築する必要があります。
セクハラの相談等にかかる情報は、個人のプライバシー性が強い情報ですので、プライバシーの保護のために必要な措置が求められます。
また、ハラスメントについての相談をしたことや事実の確認に協力したことを理由に不利益な取扱いが行われてはなりません。
そこで、事業主は、社内で不利益取扱いを禁止するとともに、周知・啓発して徹底を図ることが求められます。
よくある質問(FAQ)
Q1. セクハラは異性間でなければ成立しませんか?
成立します。男性から女性への言動に限らず、女性から男性、同性間の性的な言動もセクハラに該当します。被害者・行為者の性別や性的指向・性自認にかかわらず、性的な言動によって不利益や就業環境の悪化が生じればセクハラとなり得ます。
Q2. 一度だけの言動でもセクハラになりますか?
環境型セクハラは継続的な言動が問題となる場合が多いものの、一度の言動であっても、重大な行為の場合は、それだけでセクハラに該当し得ます。回数の多さだけでなく、言動の内容や程度もあわせて判断されます。
Q3. 会社がセクハラに適切に対応しなかった場合、会社の責任は問われますか?
会社が相談を放置するなど、雇用管理上の措置義務を怠っていたと評価される場合には、被害者に対する損害賠償責任を問われるおそれがあります。
まとめ
本記事では、セクハラの定義とは何か、該当する言動と会社が負う対応義務について解説しました。
- セクハラとは、職場での労働者の意に反する性的な言動により、不利益や就業環境の悪化が生じることをいう
- 対価型・環境型の2つの類型があり、行為者・被害者の性別を問わない
- 判断は労働者の主観に加え、平均的な労働者の受け止め方も考慮される
- 会社には方針の明確化、相談体制の整備、事後対応、プライバシー保護等の措置義務がある
セクハラの該当性や、会社としてどこまでの措置を講じるべきかの判断は、個別の事情によって異なり、専門的な検討が必要になる場面が少なくありません。
当サイトを運営する弁護士は、セクハラをめぐるご相談や事実認定のサポートについて対応可能です。
相談を希望する方は以下のフォームからご連絡ください。
この記事の執筆者
本サイトを運営する弁護士(第一東京弁護士会所属)が執筆しています。


コメント